
幼い少女が出合う人生の喜びと痛み
美しいアニメーションに目を奪われる

Ikki Films,
2 Minutes, France 3 Cinema
Puffin Pictures, 22D Music
米ゴールデングローブ賞アニメ映画賞や米アカデミー賞長編アニメーション映画賞にノミネートされるなど、世界的に高い評価を受けるフランス製作の長編アニメーション映画。
神戸生まれの作家アメリー・ノートンによるベストセラー小説『チューブな形而上学』を原作に、日本で生まれたベルギー人の女の子アメリの誕生の瞬間から3歳までの経験がアメリの視点で描かれる。
1960年代の日本・神戸に赴任するベルギー人外交官の両親のもとに生まれたアメリは、生まれてすぐに、医師が“この子は植物だ”と表現するようにまったく動かない子どもだった。しかし、すでに2人の子どもがいた夫婦はアメリの異変を気に留めずにアメリを大切に育てていた。やがて2歳半になったアメリは突然、動きはじめ、両親や兄、姉を喜ばせる。ところが、まるで“怪物”のように泣いたり騒いだりするアメリに両親は疲労困憊。そこへ父方の祖母がベルギーから訪ねてくる。
アメリが植物状態という不穏な始まりに驚かされるが、目覚めてからのアメリは日本の生活の中でいろんな初めてを経験し、生きる喜びや痛みを感じながらすくすくと育っていく。
日本には“三つ子の魂百まで”という諺があるように、3歳頃までの乳幼児期の触れ合いはとても大切なものと言えるだろう。アメリに影響を与えるのは、陽気な祖母と優しい日本人の家政婦・ニシオさん。2人とも荒れるアメリの心を、茶目っけたっぷりの方法で鎮め、アメリはそんな2人が大好きになる。
無邪気に遊ぶ兄や姉を横目に、ニシオさんに懐くアメリは日本の自然や風習に親しんでいく。雨に魅せられたり、灯篭流しを経験したり、家族で海水浴に行ったり。そんな楽しい出来事に忍び込む死の影にドキリとさせられる。
〈大切な人たちと笑って過ごせる日常〉は、本当は奇跡的な出来事なのだろう。乳幼児の子どもを主役にすえながらも、生と死をテーマにした哲学的なストーリーを紡ぐフランス流のアニメーションはファンタジックで味わい深い。
昭和40年代の古式ゆかしい日本の風景を、鮮やかな色彩と透明感にあふれた優しいタッチで描いた美しいアニメーションは見応えたっぷり。
大きな緑色の瞳を輝かせるアメリとともに、人生の旅の“始まり”を追体験してほしい。
(ライター:能登春子)

3月20日より全国ロードショー
作品情報
2025年/フランス/77分/カラー/提供:ハーク/配給:ファインフィルムズ
公式サイト:https://littleamelie-movie.com/
