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『ブゴニア』


宇宙人侵略をめぐる壮絶な死闘
ヨゴラス・ランティモス監督の痛快作

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観る者を驚愕させる斬新な映画の作り手として、近年、高い評価を受けるギリシャ出身の映画監督ヨルゴス・ランティモス。
第80回ベネツィア国際映画祭で金獅子賞に輝いた『哀れなるものたち』(’23年)でより顕著になったランティモス監督の描く奇想天外な物語は、“訳が分からない”と紙一重とも言えた。
しかし、彼の名前を世界に知らしめた『哀れなるものたち』は、大胆な性描写でさえ芸術的に見せた摩訶不思議な映像世界や、欲にまみれた愚かな人間への痛烈なパンチのようなメッセージが圧巻で、以降、予測不能な展開が楽しめる映画として、ランティモス監督の新作への期待値は高まっている。
前作『憐みの3章』(’24年)はやや難解だったが、最新作『ブゴニア』はそんな期待に応える衝撃作だ。


映画冒頭、養蜂をしているテディ(ジェシー・プレモンス)は引きこもりの従弟ドン(エイダン・デルビス)に陰謀論を語っている。ちょっぴりとぼけた2人が怪しげな準備をする一方で、製薬会社オークソリスのカリスマ女性CEOミシェル・フラー(エマ・ストーン)はスタイリッシュなオフィスで颯爽と仕事をしている。
その日、仕事を終え、愛車のベンツで帰宅したミシェルは覆面姿の2人組に襲われる。日課の運動で鍛えるミシェルは俊敏な動きで暴漢たちに応戦するが、ついに捕まり、車で連れ去られてしまう。
2人組の正体はテディとドン。テディは「宇宙人との交信を断つため」と言い、麻酔で眠るミシェルの長い髪を丸刈りにして、自宅の地下室に監禁する。陰謀論者のテディはミシェルのことをアンドロメダ星人だと決めつけ、宇宙人が乗る母船へ連れていくように迫る。彼の目的は、地球を守るため、地球を脅かす宇宙人を地球から撤退させることだった。


なぜか「宇宙人」と思われたミシェルが、狂信的なテディから何とか逃げ出そうとする姿が描かれる。必死に否定しても、自分の権力を振りかざして脅してもダメなら「自分は宇宙人だ」と言って懐柔するミシェル。宇宙人の存在をめぐる、子どもじみた攻防に思わず苦笑してしまうが、ミシェルがテディとの駆け引きや地下室の様子などから脱出方法を探る過程は、スリル満点のアクションスリラーとして楽しめる。
しかし、ランティモス監督の場合、単なる脱出劇に留まらない。終盤は怒涛の展開で、観終わった後、思わず黙り込んでしまうほどの衝撃を受けた。“予測不能”というか“理解不能”というか……、人それぞれの感想を抱くだろう。挑戦的だが、問題だらけの現代社会をシニカルな視点で捉えた痛快な作品である。荒唐無稽では片づけられない独創性に舌を巻くしかない。
韓国のカルト映画『地球を守れ!』(’03年)を現代的にリメイク。アメリカ社会の風刺劇『エディントンへようこそ』(’25年)など、予測不能なストーリーテラーでもあるアリ・アスターが製作に加わっている。
(ライター:能登春子)

作品情報

2025年/アイルランド・イギリス・カナダ・韓国・アメリカ合作/118分/PG12/配給:ギャガ
公式サイト https://gaga.ne.jp/bugonia/


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