
映画『トニー滝谷 4Kリマスター版』の公開記念舞台挨拶が都内で行なわれ、
イッセー尾形と宮沢りえが登壇して作品について語った。

本作は、村上春樹の短編小説を市川準監督が映画化(2005)。ナレーションを西島秀俊、音楽を坂本龍一が担当した。最愛の妻を亡くし、喪失感と孤独感を抱えた男と妻によく似た若い女性との交流が描かれる。
公開から21年の時を経て4Kリマスター化された本作について、主人公・トニー滝谷と彼の父である滝谷省三郎の一人二役を演じたイッセー尾形は「特殊ですね、この作品は。村上春樹さんの原作の力、市川準マジックの力、それと我々出演者の力かな(笑)。普遍的なテーマを扱っている作品に集まったチームです」と話す。

トニーの亡くなった妻・A子と妻の死後に彼の前に現れる女性・B子の一人二役を演じた宮沢は、「本当に大好きな作品です。自分の映画って、観返すとアラばかり目に付いてしまうのですが、『トニー滝谷』は何度でも観られる作品です」と自分にとって大切な作品であると打ち明けた。
『トニー滝谷』は、市川監督が長年にわたって愛読してきたという村上作品の中から、念願叶って映像化した作品。第57回ロカルノ国際映画祭で、審査員特別賞、国際批評家連盟賞、ヤング審査員賞をトリプル受賞するなど、国内外で高い評価を獲得した。
特殊な撮影方法が取られたという本作について、宮沢は「セットは作られているのですが、壁がない状態。家の中のシーンなのに空が映っていたりだとか、風が流れる影響があったりだとか……」と話し出す。「今までになかったことでした。シーンをつなぐカメラワークも緻密に計算されて。とっても行間が詰まった芝居という感じがすごく素敵でした」と撮影当時を振り返った。
また、宮沢は「現場でお芝居しながら突然 “ナレーションも読んでみてください” とおっしゃって―」と市川監督のこだわりの演出も明かす。

尾形も「撮影の仕方自体が特殊なんですよ。レールに乗ったカメラがこっちに向かってきて、芝居がすんだら戻っていく。それの繰り返しです。カメラが来るぞ~と思うと、『良いところ見せよう』と、ドキドキしちゃって(笑)」と撮影当時を回想。
さらに、宮沢が「“見せよう”とする芝居はNGでした。(監督が尾形に)『本当に芝居が巧みなことは分かるけど、いつものイッセーさんを捨てて』 と言われているのを見て、衝撃的でした」と市川監督の特別なこだわりのある演出方法について話した。

宮沢は「私が作品の魔法みたいなものにかかったんだなと思います。演じ分けについて、後にも先にもあんなふうに曖昧に始まって、グーッと集中していく時間は本当になかった。家であれこれ考えてから現場に行っても、監督は『全部いらない』って(笑)。結局、私がいろんな意味でゼロにならないと監督は始めてくれないんですと市川督の独特な感性についても話した。
一人二役を演じた尾形は「僕は外見を変えることが多かったのですが、りえさんは、内面を変えなければいけないので大変だったと思います。準さん(市川監督)が、『いやぁ、りえは天才だ!』って言っていました」と宮沢の演技を大絶賛した。
また、尾形は「この作品を好きと言ってくれる人がほんとに多いんです」としみじみ。
宮沢は「私にとって原点のような映画です。市川準監督(08年死去)にもうお会いできないのが悔しいけれど、作品って生命力を持って生き残っています。この作品を多くの方に知ってほしい」と作品への熱い思いを伝えた。
(文・撮影:福住佐知子)

◆◆◆ライターのひとりごと◆◆◆
何度もリピートしたくなる作品。りえちゃんの時代の代表作。とても美しい。イッセー尾形さんの演技力に脱帽。
3月27日より全国順次ロードショー
作品情報
2005年/日本/75分/配給:アンプラグド
公式サイト:https://unpfilm.com/tony4k/
