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『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』


ティモシー・シャラメが軽快に演じる
アンチ・ヒーローが追うアメリカン・ドリーム

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1950年代のアメリカで、卓球の世界チャンピオンを目指す青年マーティの型破りな挑戦の日々を描いた痛快なサクセスドラマ。
“最高(シュプリーム)”の人生をめざして、がむしゃらに突き進む野心家で利己的なマーティを演じたティモシー・シャラメが『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』(‘24年)に続き、2年連続で米アカデミー賞主演男優賞候補に選ばれたのを始め、米アカデミー賞では9部門でノミネートを果たすなど、アメリカの賞レースを賑わせた話題作だ。


1952年ニューヨーク。卓球の才能を持つマーティ・マウザー(ティモシー・シャラメ)は叔父の経営する靴屋の販売員として働きながら、卓球の世界チャンピオンを目指していた。得意のハッタリで靴を売り、既婚者で恋人のレイチェル(オデッサ・アザイオン)を店に連れ込むという適当な仕事ぶりながら、叔父から販売員としての実績を認められ、店長への昇進を打診されたマーティ。しかし、小さな靴店の店長に収まるつもりは毛頭なく、約束の給金をもらえなかったマーティは靴屋の金庫から金を盗み出し、イギリスで開催される世界卓球選手権に出場する。


冒頭から、身勝手さ全開のマーティはストーリーが進むごとに“どうしようも無さ”が増していくアンチ・ヒーロー的なキャラクター。イギリスでは、負けた相手に暴言を吐き、高級ホテルに泊まって国際卓球協会に借金を作り、大会には出場禁止になり、レイチェルが妊娠して……。ほかにも最悪な状況が重なるけれど、マーティは決してブレない。何が何でも世界一になるために、日本で開催される世界選手権に出場しようとハチャメチャな計画を企てる。

スピード感あふれる卓球のラリーの応酬のように、目まぐるしく展開するエピソードの中で、マーティ演じるティモシー・シャラメはマシンガントークをさく裂させ、フルスロットルで動き回る。人を食ったような悪事もするけれど、裕福なアメリカ人女優ケイ・ストーン(グイネス・パルトロウ)との危険な情事もある。多彩な表情を見せる、まさにティモシー劇場だ。

成功をどん欲に求めるあまりに、自己チューで非情なところもあるけれど、マーティの信念には共感できることもある。それは、「自分の選択で生きる」ということ。「どんな道を選んでも自分の責任だ」と啖呵を切るマーティの“自分を信じる強さ”は見習いたいところだ。


監督・脚本はジョシュ・サフディ。これまでは弟のベニーとともに『グッド・タイム』(’17年)、『アンカット・ダイヤモンド』(’19年)など予測不能な犯罪ドラマを手がけてきた。

本作は、ジョシュ・サフディ監督が実在の卓球選手マーティ・リーズマンの人生に着想を得たオリジナルストーリー。卓球がおはじき程度の遊びとしか見なされていなかった時代に、卓球で世界を目指すことは途方もなく馬鹿げた夢だったようだ。それでも、たとえ笑われても自分を信じて夢を追う。そんなマーティの青臭い姿は、世界が混沌とし夢を追う余裕のない現代に、懐かしくも新鮮に映り、心を動かされた人は多いのだろう。

クライマックスでは、昭和30年代の日本を舞台にした卓球の試合が描かれる。かつてのハリウッド映画に登場したアメリカ人から見た“ヘンテコ”な日本のようなシュールな光景もお楽しみポイントだ。
(ライター:能登春子)

作品情報

2025年/アメリカ/149分/配給:ハピネットファントム・スタジオ
公式サイト:https://happinet-phantom.com/martysupreme/


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