
飽くなき挑戦を続けるジョディ・フォスターが魅力的
名優たちが織りなす大人のフレンチ・ミステリー

ハリウッドきっての知性派俳優ジョディ・フォスターがフランス映画で初主演を務めた心理サスペンス映画。
フランス映画に主演することが「長年の夢だった」というジョディ・フォスターは、全編、フランス語のセリフを流暢にこなし、人間の深層心理をテーマにした不可思議なフレンチ・ミステリーの迷宮に観る者を誘う。
パリで活躍するアメリカ人精神分析医リリアン(ジョディ・フォスター)は、パリのアパートの自宅に構えた診察室で、患者のカウンセリングしている。
患者に静かに寄り添い、理知的に見えるリリアンだが、パリでの仕事や生活はストレスも多そうだ。診察中、アパートの上階の部屋から騒音がし、苦情を言い行くが、逆にひどい言葉を投げつけられる。また、9年間、禁煙できない悩みを抱えた男性患者からは、「別の催眠療法を1回受けただけで禁煙が成功した。あなたの診察は欺瞞だった」と言われてしまう。
そんな中、リリアンは長年診察してきたポーラ(ヴィルジニー・エフィラ)の突然の死を知らされる。ポーラの娘によれば自殺の可能性があるというが、診察時にはその兆候がなかったことから、リリアンはポーラの死に疑問を感じ、独自に調べはじめる。
「殺人かもしれない」とリリアンが疑うポーラの死の真相とともに、リリアンの秘められた“プライベート”にも迫るミステリー。
リリアンは息子のジュリアン(ヴァンサン・ラコスト)の家を訪ねるが、生まれたばかりの孫を抱くことを躊躇する。また、突然、涙が止まらなくなるという奇妙な症状に見舞われたリリアンは眼科へ行くが、診察した眼科医はリリアンの元夫ガブリエル(ダニエル・オートゥイユ)だった。
リリアンの希薄な家族関係、さらにポーラの死の真相さえ、リリアンの幼少期の体験や前世に起因するのでは? と思わせる不思議な描写が挿入される。現実とリリアンの深層心理が交錯した謎めいたストーリーが静かに展開する。
精神分析医として成功しつつも、実は他人との関係をうまく築けないリリアン。9年間、診察しても禁煙を達成できなかった男性患者の例もあり、彼女は本当に患者たちの精神分析を行えていたのか。ポーラの死の真相とともに明かされるリリアンの意外な姿に驚かされる。
几帳面で堅物なリリアンが素人探偵となり、事件を調べる過程では、ままならないフランスのお国柄にイラついたり、女性問題で離婚したガブリエルと親密になったりと、理性では抑えきれないリリアンの、ユーモラスでチャーミングな人間味が見える。リリアンの多面的なキャラクター性を微細に表現するフォスターの演技はやはり見応えがある。
リリアンの元夫を軽妙に演じたのはフランスの名優ダニエル・オートゥイユ。謎めいたポーラ役を、濱口竜介監督の『急に具合が悪くなる』(’26年)で本年度開催された第79回カンヌ国際映画祭の最優秀女優賞をW受賞したヴィルジニー・エフィラが演じるなど、脇を固める豪華なフランス人俳優陣も注目だ。
監督は、長編映画監督デビュー作『美しき刺』(’10年)、ナタリー・ポートマン主演『プラネタリウム』(’16年)など、フランス内外で高い評価を受けるレベッカ・ズロトヴスキ。
(ライター:能登春子)

7月24日より全国ロードショー
作品情報
2025年/フランス/107分/PG12/配給:スターキャットアルバトロス・フィルム
公式サイト:https://cinema.starcat.co.jp/private-case/
