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『マテリアリスト 結婚の条件』


リアルなラブストーリーの名手が見た婚活市場
幸せな結婚のために大切なものが見えてくる

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子どもの頃にほのかに思いを寄せていた男女の24年ぶりの再会をしっとりと描いた大人のラブストーリー『パスト ライブス/再会』(’23年)で、長編映画監督デビューを飾ったセリーヌ・ソン監督・脚本の第2作。

米アカデミー賞で作品賞と脚本賞候補になった前作では、ロマンティックだけどリアリスティックな男女の姿が多くの人々の興味と共感を誘ったが、ソン監督のラブストーリーの特徴は、自分の身に照らして考えられることだろう。

本作の舞台はニューヨークの婚活市場。おそらく、ほとんどの人が悩むだろう結婚相手の“決め手”をテーマにした、スイート&ビターな大人の恋愛事情が描かれる。


ニューヨークの結婚紹介所で、敏腕マッチメーカーとして働くルーシー(ダコタ・ジョンソン)はマテリアリスト(物質主義者)で、恋愛を感情だけでなく、“資産価値”として冷静に判断し、9組もの結婚を成立させてきた。しかし、仕事で順調に成果を出すルーシー自身は、結婚に資産価値を見い出せず、このまま独身を貫こうと考えていた。

ある日、自分がマッチングさせたカップルの結婚式に出席したルーシーは、隣に座った新郎の兄ハリー(ペドロ・パスカル)と話し込むと、理知的なルーシーを気に入ったハリーから情熱的なアプローチを受ける。そんな2人のテーブルへやってきたウェイターを見て、ルーシーは驚く。そのウェイターはルーシーの元カレのジョン(クリス・エヴァンズ)だったのだ。


身長180cmでビジュアルも良く、超リッチな投資家のハリーと、俳優の夢を追い続け、37歳でアルバイトを転々とするジョン。自信ありげなハリーにぐいぐい迫られる一方で、気の置けないジョンへの思いがよみがえるルーシー。性格、収入、生き方などが対照的な2人の男性の間で揺れるルーシーの姿が描かれるのだが、万人の憧れを詰め込んだロマンティックコメディにしないところがソン監督流。ルーシーは夢のようなハリーとの生活を現実的な目で見つめ、不安定なジョンとの生活に耐えられず別れたことを思い出す。

ルーシーがマテリアリストになったのは、恋にも夢にも破れた若き日の苦い経験があるからだ。美人でスタイル抜群で、男性にモテるのも「むべなるかな」と思わせるダコタ・ジョンソン演じるルーシーが、まったく浮ついていないところに好感が持てる。スマートで落ち着いた物腰のジョンソンは、思慮深い女性の役が本当によく似合う。

ルーシーがマテリアリストでも打算的に見えないのは、決して無茶な高望みをしていないから。また、「結婚相手で人生は激変する」、「愛だけでは生活ができない」という厳しい結婚の現実は確かにある。だから、マテリアリストになるのも仕方がないし、ちょっぴり共感もしてしまう。けれど……。


実は、売れない劇作家時代にマッチメーカーとして働いていたというソン監督。リアルなラブストーリーの名手が実体験を基に導き出した“幸せな結婚”は、マテリアリストのあふれた、このご時世ではもはや理想になってしまったのかもしれないが、多くの人が心から求める現実になればいいと思う。独身、既婚問わず、結婚に対して真摯に向き合いたくなる、為になるラブストーリーだ。
(ライター:能登春子)

作品情報

2025/アメリカ/116分/カラー/ビスタ/5.1ch/配給:ハピネットファントム・スタジオ
公式サイト:https://happinet-phantom.com/materialists/


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