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『マスターズ・オブ・ユニバース』


80年代から愛されるアクションフィギュアの世界を実写映画化
レトロ感が楽しくて胸熱なヒーローアクションエンターテイメント

バービー人形の世界を実写で描き、スマッシュヒットを記録したファンタジックなロマコメ映画『バービー』(’23年)に続き、アメリカの老舗玩具メーカー、マテル社の生み出したキャラクターが実写映画化された。

『マスターズ・オブ・ユニバース』は、1981年にマテル社から発売開始された男児向けアクションフィギュア。 “ヒーマン/He-MAN([男らしい男]を意味する造語)”を目指す高潔の戦士を主人公に、善と悪の多彩なキャラクターがラインアップされており、幻想的な宇宙を舞台にスケールの大きなヒーローアクションごっこが楽しめるとあって、瞬く間に少年たちの心をつかんだ。

すぐさまDCコミックスやテレビアニメシリーズ化され、1987年には、アクション俳優ドルフ・ラングラン主演で実写映画『マスターズ/時空の覇者』が製作された。近年では、Netflixでアニメシリーズが配信されて好評を博すなど、約半世紀にわたり、根強い人気を保っている。


とはいえ、「懐かしい!」と歓喜するアクションフィギュアマニアがいる一方で、日本では、万人に認知度の高いキャラクターとは言い難く、元ネタがオモチャだと聞けば、小さな子どものためのファミリー映画、はたまたティーンエイジャー向けの青臭いアクション映画と思い、敬遠する向きもあるかもしれない。

ところが、そんな典型的な先入観は見事に覆されるはずだ。さまざまな特徴でアピールするヒーローアクション映画が群雄割拠する中で、この映画の大きな魅力はフィギュアたちが生まれた“1980年代”というポップで元気のあった“古き良き”時代へ観る者を誘うこと。昨今の常套句である最先端の視覚効果技術を駆使したリアルな映像や、クールなアクションシーンに目を見張る一方で、金髪で筋骨隆々の男前なヒーローや、人間が着ぐるみに入ったような悪役キャラクターなど、懐かしさを感じさせるベタな描写にニヤリと笑ってしまう。

80年代のレトロ感を“あえて”まとったヒーマンの活躍は、万人の心を熱くするはずだ。


惑星エターニアの王子アダムは、高潔の戦士として無敵の存在である父のランドル王(ジェームズ・ピュアフォイ)に認められるべく、王国親衛隊のリーダー、ダンカン(イドリス・エルバ)のもとで剣術の訓練に励んでいた。そんな中、エターニアを支配するべく、骸骨顔のスケルター(声:ジャレット・レト)率いる怪物じみた傭兵たちがアダムらの暮らす宇宙的要塞キャッスル・グレイスカルに攻め込んでくる。

ランドル王はアダムの身を守るため、アダムを“誰にも知られない場所”である地球へ送り込む。しかし、エターニアに帰還できる伝説の剣(パワーソード)を失くしてしまったアダムは、15年もの間、地球にとどまり、パワーソードを探し続けていた。


地球で大人になったアダム(ニコラス・ガリツィン)が人事の仕事をしているという映画版オリジナルの設定を加えた本作は、ヒーマンとして覚醒するアダムの成長を中心に、ユニークなキャラクターが入り乱れる『マスターズ・オブ・ユニバース』の複雑な幻想世界を、怒涛のアクションシーンと、大らかなユーモアたっぷりに描いている。

大切なパワーソードを失くしてしまい、15年も帰郷できないアダムは「自分を宇宙から来た」と周囲の人々に明かしてドン引きされてしまう、ちょっぴり“天然”なキャラクターだが、とても純朴で良い人そう。地球ならではの方法でパワーソードを探し出そうとする、まるで“Z世代”のようなアダムに思わず笑ってしまう。

アダムが地球からエターニアに戻るまで、そしてエターニアに帰ってからもアクションシーンが満載。超人的な戦士やしゃべる動物、ロボットなど、いろんな設定のキャラクターが次々に出てくるストーリーは目まぐるしく展開し、追いつくのにやや苦労するが、ただ賑やかなだけでなく、とても工夫が見られ、好感が持てる。アダムが地球での経験を生かして、ヒーローとして覚醒するくだりには、現代に生きる我々の心にも響くメッセージが込められている。

ブライアン・メイをギタリストに迎えた音楽も、この映画の魅力の一つである。ぎゅんぎゅうんとうなるような躍動感と疾走感あふれる旋律は、80年代のヒーローアクションが持つ無邪気なワクワク感を喚起させ、楽しくなってくる。

監督は、人気SFアクション映画『トランスフォーマー』シリーズの1つ、『バンブルビー』(’18年)の実写映画化を成功させたトラヴィス・ナイト。古さと新しさを巧みに融合した、このアクションフィギュアたちによるヒーローアクションエンターテイメントを温かい目で見守っていきたい。
(ライター:能登春子)

作品情報

2026年/アメリカ/140分/配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテイメント
公式サイト:https://masters-of-the-universe.jp/


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