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『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』


パンクを愛する約50年前の若者たちが
過激かつ、ひたむきに起こした音楽革命

©2026 映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』製作委員会

反体制を掲げ、自由を希求した若者たちが生み出したパンク・ロック。1970年代のイギリスやアメリカで台頭したパンク・ロックは先鋭的で過激な曲調とパフォーマンスが特徴で、聞く人を選ぶ音楽ジャンルである。

しかし、この映画を観れば、自分たちの心のままに素直に生きるパンク・ロッカーたちの姿は清々しく映り、うらやましくなるかもしれない。
日本では、1978年のわずか1年間だけパンク・ロック・ムーブメント「東京ロッカーズ」が起こったという。東京ロッカーズとは、大手レコード会社に頼らず、ライブハウスを拠点に自分たちの方法で音楽を発信していたロック・バンドの総称である。
歌謡曲や演歌、フォークソングが時代を彩っていた日本で、いわゆる“インディーズ”の先駆けである数組のロック・バンドが、“自分たちの音”を信じて駆け抜けたアンダーグラウンドの音楽シーンに光を当てた、“激熱な”青春音楽映画が完成した。


パンク・ロックのシンボルだったセックス・ピストルズが解散した1978年。写真家の夢に挫折したユーイチ(峯田和伸)は、ラジオでセックス・ピストルズの音楽を聴いて衝撃を受ける。「もっとパンクが聴きたい!」と探し回るユーイチは、「ロッキン・ドール」というミニコミ誌を手に入れ、東京・渋谷のライブハウスへ足を運ぶ。そこでカリスマ性を持つボーカル・モモ(若葉竜也)が率いるTOKAGEのライブに衝撃を受けたユーイチは、TOKAGEの活動を記録するカメラマンとなり、ほかのロック・バンドとも交流を重ねていく。


実際に東京ロッカーズの面々と交流を持ち、ムーブメントの渦中にいた写真家・地引雄一の同名著作の映画化を熱望した俳優・田中トモロヲが10年ぶりに監督を務め、宮藤官九郎が脚本を手がけている。
田中は’80年代にパンク・ロックバンド、ばちかぶりのヴォーカルとして活躍し、宮藤は約30年にわたりパンク・コントバンド『グループ魂』で活動している。共にパンク精神を持ち、“胸熱な”青春音楽映画『アイデン&ティティ』(’03年)の監督&脚本コンビでもある田中と宮藤が、それぞれのスタイルで新しい音楽、パンクに打ち込む若者たちの姿を生き生きと描き出す。
リザードをTOKAGE、フリクションを軋轢、S-KENをS-TORAなどバンド名は変えられているものの、原作に描かれた実話をベースにしたストーリーでは、伝説的なパンク・ロッカーたちが奇抜で破天荒なパフォーマンスで注目を集める一方で、自分たちでレコードを作り、流通し、イベントも自ら企画して行う“DIY”の姿勢で、ひたむきにパンク・ロックと向き合っていたことを伝える。
個性豊かな東京ロッカーズの面々に扮するのは、若葉竜也のほか仲野太賀、吉岡里帆、間宮祥太朗、大森南朋、中村獅童など。ライブ・シーンでは、インディーズ誕生時の空気感を大切にするためにオリジナルの音源を使用し、俳優たちは曲に合わせて当て振りで演じている。
過激なパフォーマンスを再現した衝撃的なライブ・シーンは必笑もの。約50年前のエネルギッシュな若者たちが生み出したパンク魂を感じてほしい。
(ライター:能登春子)

作品情報

2026年/日本/カラー/ビスタ/5.1ch/上映時間:130分/配給:ハピネット・ファントムスタジオ
公式サイト:https://happinet-phantom.com/streetkingdom/


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