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『ザ・ブライド!』


斬新な 『フランケンシュタインの花嫁』は必見
モンスター級にぶっ飛んだロマンススリラー映画

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19世紀初頭に女流作家メアリー・シェリーが発表したゴシック小説『フランケンシュタイン』の主人公、死者の肉体や殺人者の脳を継ぎ合わされて創り出された人造人間フランケンシュタインは悲劇のモンスターと言えるだろう。

巨大で醜い容姿に、制御の効かない凶暴さや怪力は決して自分の望んだものではないのに、人々から怪物と呼ばれ、忌み嫌われてしまう。さらに辛いのは人造人間であるために永遠の命が与えられていること。

そんな悲しきモンスターが共に寄り添う伴侶を求めた結果、とんでもない花嫁(ブライド)を生き返らせてしまったのが本作品。声無き者が理不尽に虐げられ、抑圧された世界に“革命”を起こす、ぶっ飛びヒロイン、“ザ・ブライド”をフィーチャーした新たなフランケンシュタインの物語が誕生した。


1930年代のシカゴ。長い孤独に耐えかねたフランケンシュタイン、フランク(クリスチャン・ベール)から伴侶を創ってほしいと頼まれたユーフォロニウス博士(アネット・ベニング)は、墓場から掘り起こした女性の死体を彼の花嫁、ブライド(ジェシー・バックリー)としてよみがえらせる。

フランクにとっては念願の花嫁だったが、目覚めたブライドは狂気的で心の奥底に“怪物性”を持つ女性だった。それでも、「君は僕の婚約者だった」と嘘をつき、ブライドの気を引こうするフランク。しかし、2人はとある事件をきっかけに追われる身となってしまう。


初監督作『ロスト・ドーター』(’21年)が高い評価を受けた女優マギー・ギレンホールの監督第2作。脚本も手がけたギレンホール監督は、古典ホラー映画『フランケンシュタインの花嫁』(‘36年)では、約3分しか登場せず、セリフも無い花嫁の、“主体性のない女性像”に着想を得て、真逆のキャラクターとして強烈な個性のブライドを誕生させたという。

生き返ってからのブライドは大胆不敵な行動をとり、逃走中でも世間を騒がすトラブルばかり起こしていく。蘇生中に吐き出した黒い物体を顔につけたままのブライドと額に継ぎ目のあるフランクは不気味で怖い。けれど、息ぴったりに悪ぶりを発揮する姿はまるで“ボニー&クライド”のようでカッコいい。

ブライドを演じるのは、今年3月に発表された米アカデミー賞で主演女優賞に輝いたジェシー・バックリー。受賞対象作となった『ハムネット』(’25年)では、厳かで神秘的なムードの中で苦悩を抱えた母親を全身全霊で演じたバックリーが、本作のブライド役を演じていることに驚かされるが、両作品とも役柄に憑依したバックリーの演技は必見だ。

フランケンシュタインを演じるのは、変幻自在の演技派クリスチャン・ベール。映画スターのロニー・リードに憧れる、純粋で心優しい一面も持つモンスターに軽やかに息を吹き込む。

ブライドの心に潜む“怪物性”とは、不条理な世の中で抑圧された不満の塊。特に女性が虐げられていた時代、心の中の怪物性を解き放ち、不満の声を上げるブライドは、やがて“革命”の象徴として女性たちのアイコンになっていく。

世の中を腐らせた人間たちへの怒りに突き動かされるブライドと、彼女を愛し、守り抜こうとするフランケンシュタインの愛と破壊の逃避行はエネルギッシュでエキセントリック。残虐で衝撃的なアクションシーンや性的に際どいシーンがあり、本作を女性が監督したことに驚かされるが、そんな時代錯誤な発言をしているとブライドに襲われてしまうかもしれない!? マギー・ギレンホール監督の豊かな才能に完全にノックアウトされた。

女性パワーがみなぎる痛快なロマンススリラー映画。未来の見えない、不安な現実世界に沈んでいたら、本作を観てハイな気分になってほしい。
(ライター:能登春子)

作品情報

2026年/アメリカ/上映時間:127分/PG12/配給:東和ピクチャーズ・東宝
公式サイト:https://thebride-movie.jp/


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