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シネマ歌舞伎『曽根崎心中』舞台挨拶付完成披露上映会レポート


歌舞伎の舞台を撮影し、映画館で楽しむ“シネマ歌舞伎”の
最新作『曽根崎心中』の完成披露上映会をレポート。

©松竹

京都の映画館で行われた完成披露上映会では、舞台挨拶に本作で父・坂田藤十郎のお初と共に徳兵衛役で出演し、シネマ歌舞伎版でも編集協力を行った中村鴈治郎(がんじろう)、南座公演『曽根崎心中物語』でお初・徳兵衛を務める中村壱太郎(かずたろう)が親子そろって登壇した。

江戸時代に近松門左衛門が人形浄瑠璃として書き下ろした悲恋の物語『曽根崎心中』は、成駒屋が上方歌舞伎の演目としてよみがえらせ、代々、受け継いできた歴史的な作品である。
昨年、邦画実写映画の歴代興行収入第1位となり、社会的なブームを巻き起こした映画『国宝』で、女方の道を究めようとする2人の若者の運命を大きく変えた歌舞伎の演目として登場したことから、より一層大きな注目を集めている。

本作では、お初を1400回以上にわたり演じた人間国宝・四世坂田藤十郎の名演をじっくりと堪能することができる。


©松竹

鴈治郎は「『曽根崎心中』がシネマ歌舞伎になることを一番喜んでいるのはたぶん父(藤十郎)ではないかと思う。それを皆さまにお届けできることは大変うれしい」と喜びを語った。

壱太郎は 19 歳のときに初めて祖父・藤十郎からの『曽根崎心中』の稽古を受けたと言い、「祖父はお初を『1400回やっていても、毎日初めてやる気持ちになるんだよ』と話していた。僕は当時、女方のことがまだ右も左もわからないなかで、(劇中の仕草)“段に登る”、“腰をかける”といった細かい仕草や煙管の扱い方まで教えてもらった」と思い出を振り返った。

編集協力として制作にも参加した鴈治郎は「6台のカメラの中から『父が綺麗で可愛らしく映っているカットを使おう』とこだわって再編集した」と明かし、壱太郎は「僕らが見る記録映像よりもずっと綺麗で、オペラグラスを使っても見られないような“アップのすごさ”を体感してほしい」とシネマ歌舞伎の映像のクオリティの高さをアピールした。


©松竹

2人は『国宝』に出演・歌舞伎指導、振付として参加している。『国宝』で女方を演じた吉沢亮や横浜流星に役作りの手本として渡した映像が、今回、シネマ歌舞伎になった2009年の舞台の映像だという。

最後に、壱太郎は「この映画がヒットすれば再び『曽根崎心中』を舞台にかけられる日がくると信じている。1人でも多くの人を誘って映画館に来てくれたらうれしい」と熱くPR。
鴈治郎は「父・坂田藤十郎の姿が残っていることがうれしい。ぜひ皆さまの目に焼き付けて、『曽根崎心中』はこんなに良い話だったんだと伝えてほしい」と力強く語った後、「ぜひ映画『国宝』以上のヒットを!」と茶目っ気たっぷりにしめくくった。
(文:能登春子/レポート・写真提供:松竹)


◆シネマ歌舞伎『曽根崎心中』の見どころ◆◆◆
映画『国宝』は日本の伝統芸能・歌舞伎の魅力を再認識させてくれた。なかでも「死ぬる覚悟が~聞きた~い」というセリフ回しが印象的に使われた『曽根崎心中』は、映画の中で重要なシーンを担っており、実際の歌舞伎を見たいと思った人も多いのではないだろうか。
現実の歌舞伎の世界においても、人間国宝の四世坂田藤十郎が1953(昭和28)年~2014(平成26)年まで60年以上にわたり、悲恋の主人公・お初を演じてきた『曽根崎心中』は特別な作品と言えるだろう。2020年に逝去された坂田藤十郎のお初がスクリーンの中によみがえったことは本当に貴重である。
映画版では、クローズアップで捉えられた情感豊かな顔の表情に驚かされる。お初と徳兵衛が見つめ合う場面では、心中しか選択肢のない恋人たちの悲痛な胸の内がひしひしと伝わってくる。藤十郎はもちろん、徳兵衛を演じる息子の中村鴈次郎も素晴らしい。
役者の繊細な立ち振る舞いや抑揚のあるセリフ回し、芸術的な舞台セットなど、夢幻のような歌舞伎の世界をリアルな映像でぜひ楽しんでほしい。

作品情報

上演月:2009(平成21)年4月/上演劇場:歌舞伎座/上映時間:99分/配給:松竹
※「シネマ歌舞伎イヤホンガイド」アプリ対応作品
公式サイト:https://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/lineup/3139/


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